toggle

みなさん、こんにちは!
陸上班の清水がお伝え致します。

JORA代表理事でオーシャンセーラーの北田氏がフランス伝統のシングルハンドレース「La Route du Rhum –Destination Guadeloupe」に挑戦します。
北田氏は弊会発足の2017年3月よりヨーロッパのオフショアレースに、より多くの日本人セーラーが参加するチャンスができるよう、JORA支援の中で貴帆のオーナー兼スキッパーとして貴帆チャレンジに参加されてきました。そして、今回貴帆で挑むソロレース「La Route du Rhum –Destination Guadeloupe」のチャレンジはまさしく北田氏個人の挑戦です。

北田氏の挑戦を通してJORAは組織としてフランスで開催されるビックレースの経験値を蓄えると共に、一人の日本人オーシャンレーサーとして北田スキッパーの挑戦をフォローし、その様子をみなさんにお伝えしていきます。早速、9月2日(日)に渡仏を控えた北田氏に出国直前8月27日(月)にインタビューを敢行致しました。

東京事務局でインタビューに応じる北田氏

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

陸:
最初に北田さんのLa Route du Rhum –Destination Guadeloupe挑戦までの経緯を教えてください。

北田さん:
2014年のRDRの視察に行ってきた。
その時、カルチャーショックだった。日本で沖縄レースだとかトランスパックとかやってきたけども、その経験が一体何だったのか、一瞬でぶっ飛ぶほど強烈なものを見た。
この時は新しい船(貴帆)は建造が始まっていなかった。そのレースを見てClass40というクラスが素晴らしいという事、そのクラスの船でRoute du Rhumに出てみたいという気持ちが芽生えてきた。その時受けた感動は、まずレースイベント。日本三大祭りと言われる「ねぶた(ねぷた?)祭り」これはお祭り期間中に約200万人が観光客として訪れるけど、その数ってすごい。Route du Rhumのレースイベント期間中に来る来場者数がその数に匹敵するということに驚いた。それと、ただレース規模が大きいだけじゃなく、エントリーできるまでにセーラーがやらなくちゃいけないことがある。クオリファイとかやるべきことを乗り越えて選ばれたスキッパーが参加している。自分の経験と力量の中でこのレースに本当に出れるかは全く未知数だったけれども、チャレンジのしがいはあるとそこに感じて日本に帰ってきた。そこから船の建造が始まった。

陸:
2014年(前回開催)Route du Rhum視察のきっかけはどういう経緯だったのでしょうか?

北田さん:
日本にいるとClass40という実際の船が存在していなかったので見ることができない。
たまたまClass40をリサーチし始めた直後にRoute du Rhumというレースがあり、Class40艇がたくさん出るから、その好機に乗じ視察に向かったんだよね。

陸:
以前からClass40のことをご存知だった?

北田さん:
2011年ごろトランスパック(Transpacific Yacht Race :北田氏は2013年にチーム貴帆で出場し成績は2位)に出た船だけど、X-41の購入を検討していた時、メルボルン大阪出場も考えていて、ダブルハンド長距離速くというテーマで船を探していた候補の一つに中古のClass40という提案があった。その時も船はオーストラリアにあり、船は見にいけなくて、身近にあったX-41を購入することになったが、その時からClass40を知っていたんだよね。ただ、当時はこの化け物のようなClass40艇をすぐに新艇で造船してというのは無謀だから中古を買って経験を積んでから進めれば?というアドバイスがあった。自分でもそうかぁ〜難しいものなんだと納得し、Class40にすぐ走らないでX-41を選んだ次第だった。結果として、オフショアレースはClass40のような船が最適だと分かったんだけど、日本国内でも的確な船の提案ができる人がいなかった。

陸:
当時からRoute du Rhumは北田さんにとって特別という印象を受けます。一体どのような魅力があったのでしょうか?

北田さん:
まずソロレースがやりたかった。当時から、Route du Rhumはヨーロッパのソロレースで最も重要なヨットレースの一つで、フランス人のオフショアセーラーにとっては最大のレースだった。Route du Rhumを目指して船を造り出したけど、2015年春に建造を初めて、その間に腰のオペがあったので、最終的にまたヨットができるとゴーサインを出してから建造に1年がかかった。2015年11月くらいに船の完成が間近になったので、最初の参戦レースを検討している中で「The Transat」が降って湧いたように開催決定し、「ん〜やるしかないでしょ(笑)」何も考えずに参加することになった。曰く付きのレースってことは後から知ったんだよね。本来であれば最後の締めくくりとも言える難しいレースだったんだけど、一番最初にやることになっちゃった。やっちゃってから周りの人に大変だよ。危ないよ。と言われた意味がわかった。実を言うと、このレース以降いくつかのレースをやってきたけど、そのあとは一度も本気になっていない。それで今回も危機感がないから未だにダラダラしてる。。。よくないことだけど。

陸:
Route du Rhumは伝統的なレースですし、盛り上がりもすごいイベントになるかと思いますが。

北田さん:
フランス人にとって特別なんだと思う。もしThe Transatに出ていなかったらすごいレースだったと思う。要はトランスパックの時はフルクルーのダウンウィンドレースだったけど、寒いところからトロピカルなところへ向かう横断レースで、Route du Rhumはそのシングルハンド版といったイメージ。距離はトランスパックより少し長いけど、ダウンウィンドで船のスピードを楽しむ。でも、だからと言って参加枠は限られているから、誰でもエントリーできるわけじゃない。大変なレースなんだろうけど。素直に言ってしまえば楽しめるレースだと思う!

陸:
つまりRoute du Rhumは従来の目標であったことに変わりはないけれど、The Transat完走という経緯を受けて、北田さんの中でまだ気持ちに少し余裕があるという事でしょうか?

北田さん:
もちろんThe TransatとRDRは比較対象になるレースではない。全く別物だよね。
RDRが簡単だと考えている訳でも、もちろんないんだけどね。
つまりは二つのトランザット。この両方のトランザットに参加できるっていうのは楽しみなことだよね。

陸:
ではこの二つのレースで共通するシングルハンドという部分ですが。北田さんはシングルハンドのレースをどう捉えていますか?

北田さん:
全て自分一人でやらなくちゃいけない。うまくいっても失敗しても全て自分の責任。
そのプロセス&結果ともにシンプルだよね。

陸:
JORAとして支援をしてきたレースはダブルハンドやフルクルーレースでしたね。今回初めてのソロシングルハンドレースの情報を発信していきます。北田さんの取り組み方に変化はあるのでしょうか?

北田さん:
まずJORA支援の究極は多くの日本人セーラーにオーシャンソロレースを経験させてあげたい。ダブルハンドは到着点ではないと思っている。

陸:
陸上班視点からいえば、なぜソロにそこまでのこだわりがあるのか?という単純な疑問が浮かんでしまうのですが。。。

北田さん:
本当に。なんでフランス人はソロをやっているんだろう?なんでアングロサクソンはフルクルーなんだろう?お互いに究極だからと思っているだろうから難しいね。

陸:
北田さんにとってはソロが究極ということなんですね?北田さんが思うシングルハンドの魅力を教えてください。

北田さん:
ん〜〜〜〜、まず一人で全てをやること。
一人で全てをやらなくちゃいけないソロレースに強い魅力を感じたんだよね。
フルクルーでやらなくちゃいけないことをたった一人でやり遂げた時の達成感なのかな。余計なことを一切考えない境地。なんでそんなことするんだろうな〜(笑)

陸:
ダブルハンドのレースなどではフィニッシュ後にお互いにセーリングのお話が盛り上がり、話題が尽きないですね。共に挑戦をしたお二人だからこそなんだろうと陸上班は羨ましく思っています。ソロレースではそう言った面はないのでしょうか?

北田さん:
一人の時は話したところで誰もわかってくれないかな。でも自分の中ではあるんだよ。
反省とかはたくさんある。あの場面ではこうできたとか、色々。時間があったら全部書き出して残していきたいけど、次から次へと新しいことをやっているので振り返っている時間がないかな。レコーダーを持っていても録音している余裕もない。

陸:
JORA支援で貴帆チャレンジを追いかけてきて、北田さんはスキッパーとして支援している日本人セーラーにたくさんのことを任せ、体験してもらい指導していたという印象があります。しかし、今回の挑戦は自身がセーラーとして挑むソロレースになり、全く違った姿勢になるのではないでしょうか?

北田さん:
そうだね。今までは経験を積んでもらうっていう意味合いがあった。得意なこと、弱いところを見て総合力を鍛えていくイメージ。でもソロであれば全て自分でやっていかなくちゃいけないからね。

陸:
総合的なトレーニングというと?

北田さん:
いや〜。仕事でも勉強でもなんでもそうだけど、合ってない人に対しては何やってもどうしようもないことがある。練習しないと遅いか?ということでもない。少しの練習で上手にできる人はあっという間できてしまう。レースは攻める守るがあるよね。守るっていうのは経営で言えば危険予知。船を壊さないように早めに対処するという、船を守るための感性。攻めるのは技術。天気予報を解析する技術、船を操船する技術とか。両方がないと総合力はあがらない。
小さいヨットからやっている人は早く帆走る技術は高いよね。全てがうまくいっている時は良いけど、想定外のことが起きた時の危険予知能力、そうならないための予防をする能力という面では、劣るよね。本当に速い人達(セーラー)は両方とも優れている。才能があって少しの経験でも想像を膨らませていける人だよね。何度やっても経験したことしかできない人もいるよね。

陸:
ご自身はどのように分析されていますか?

北田さん:
私は守りというか、まず優先することが「守り」なんだよね。なぜなら自分の場合はスタートラインに並ぶだけではだめ。順位は関係なく完走することが大事で、完走できなかったら価値はないと思っている。それで完走させるために必要なのはまずは守りでしょ。危険予知。何かが起きた時の対応能力。自分はその能力が優れていると思っている。この間のNormandy Channel Race 2018のリタイヤはそこから逸脱してるけどね(笑)
早く帆走るための技術は少しずつだよ。人より時間がかかる。年齢的・体力的なこともあるしね。だからそういったハンデの中で少しずつ積み上げていこうと思っている。ヨットってコンスタントに乗っていないといけないけど、船は日本にないのですごいハンデだよね。

陸:
そういう意味でも今回スタート2ヶ月前からの渡仏というプログラムになったわけですね?

北田さん:
苦肉の策だよね。本当は一定した間隔でリズムの振り幅が大きくならないようにフランスに行きたかった。でも、夏のレースは出れなかったし、最後に一発集中して取り組むことにした。今までの経験から1ヶ月でどのくらい積み上がるかがわかっているので、2ヶ月前だね。ギリギリの選択だ。

陸:
今のトレーニング計画を教えてください。

北田さん:
日本にいる時はビジネスで宴会が多くて体がブヨブヨになってしまうから、まずお腹についた2キロの肉を落とす。500gの筋肉をつける!2ヶ月でね(笑)あとは、船を走らせる感覚は1ヶ月しっかりやれば取り戻せるので、なるべく早く取り戻す!それと航海支援ソフトの使い方を思い出して、まだ初心者レベルだから上達させる。こんなところかな?

陸:
10月に入るとイベントも多くなり、セーリングできるのは2ヶ月ないですね。

北田さん:
そうだね。いつもいい風が吹くわけじゃないし。9月は風が強くないから、ゆっくり感覚を戻す感じかな?本当であれば、もう1ヶ月早く渡仏できればよかったんだけど、そうも行かなかったからね。

陸:
最後に、日本のみなさんに一言お願いします!

北田さん:
オヤジの星になります!

陸:
短いですね(笑)

北田さん:
まずプロでもないし、飯ネタでやっているわけでも、売名も考えてないから、これは究極の自己満足ヨットです。ただ、究極の自己満足でやってきたけど、その受けた感動は素晴らしいので、自分だけのものにしておくのは勿体なぁ。またそんなバカが出てきたときにその経験値を蓄積していた方が、すでに毎日ヨットに乗っているヨーロッパの人に比べてすごいハンデがあるわけで、余計なハンデを縮められるかな?と始めたのがJORA。一から始めたら絶対追いつけないから。自己満足で初めて究極の自己満足で続けているけど、できるだけ共有した方がいい。他のスポーツとは違う面白さがあるので、少しでもその違いを感じてもらえれば日本のオフショアレースも広がっていくのかなぁと思っています。やっている人が増えないと面白くない。そこに文化や歴史ができて行かないからね。参加人口を増やして行かなくちゃ。たまに真面目なことを言ってもいいかな〜(笑)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

北田氏による日本人初のLe Route du Rhum挑戦は今年の大きなイベントですが、JORAでは会員の皆様のご希望に沿った支援サービスができるよう活動しています。
引き続き北田氏の調練をレポートして参りますので、ぜひお楽しみに!!