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JORA BLOG

「はらたけしの……海道をゆく」Vol.1

” 人間は、時として、充たされるか充たされないか、わからない欲望の為に、一生を捧げてしまふ。その愚を哂わらふ者は、畢竟、人生に対する路傍の人に過ぎない。”

遠い昔に読んで以来、ずっと頭の片隅に棲み続けている芥川龍之介の「芋粥」に出てきたこの言葉がまた、よりによってこんな時に浮かんできた。

 

こんな時に、というのはアイルランド南端のFastnet Rockを目指して残り200マイルほどの大西洋上でヨットのマストップに上っている時ということ。突然失ったメインハリヤードの修理で上る羽目になったのである。

クライミングハーネスを付けてマストに上るなど、とうの昔に卒業していたはずだったが、その故障の瞬間、自然に、マストに上ることが私のやらねばならない命題となった。

Fastnet Rock

Fastnet Rock
30年前の1989年にFastnet Race で回航して以来だった。回航時に40ノットの風の洗礼を受けたレース後プリマスのホテルで、もう2度と外洋レースなどするまい、と誓ったのだったが……。どこか神子元島に雰囲気が似ている妖しく荘厳な雰囲気の灯台である。

 

遡れば3月の末、私がやっていたバー Cabo de Hornos に突然北さん(北田)が現れた。

後で聞けばボートショーの流れで、宜野湾に住む私の友人である伊良波一郎との待ち合わせだった。その夜珍しく私の店は繁盛して、北さんともカウンター越しに何杯もウィスキーを飲み交わした。

それ以降、私の店のイチオシメニューだったキーマカレーを食べに何度か店に足を運んでくれて、彼の今までしてきたClass40による北大西洋でのシングルハンドの冒険談をたくさん聞くことができた。そして今年10月末にスタートするダブルハンドの大西洋横断レースTransat Jacques Vabre (フランスのル・アーブル〜ブラジルのサルバドール間の4500マイル)の相棒を探しているという話を聞いたのだった……。

 

  その話を聞いて以来、私はバーの仕事が手につかなくなった。25年以上も前に、クリス・ディクソンからWhitbread 世界一周レースの誘いを受けた時の心地が蘇った。

 

既にクオリファイ済みの何人かの相棒候補とは違い、たったの1度も北さんとレースどころかセイリングすらしたことのない私には1000マイルのクオリファイが必要だったので、6月の後半にフランスへ渡り彼とダブルハンドでのトライアルセイリングに出かける必要があった。 7月と8月はLK6でTranspac 出場と日本へのデリバリーの仕事が決まっていたから、6月のフランス行きと、もし T.J.V. の相棒に決まりその準備とレースに費やされる9月から12月初旬まで入れれば、約半年は店を休まなければならなかった……。

 

何の保証も約束もなかった。しかし何の迷いもなく、と言えば嘘になるが、私は4月の後半には店を閉めることを決めていた。そして6月1日に閉店後、ブルターニュ半島の南の付け根に位置する、フランス外洋レースの聖地とも言えるロリアンに向かったのだった……。

 

  揺れ続けるマストのてっぺんで、なんとかメインハリヤードの修復を済ませて西の空を見渡すと、遥か水平線の彼方には通り過ぎていった嵐が連れて行った雲が朝陽で橙色に色付けされて輝いていた。そして、こんな時いつもこう思うのだ。

(こんなバカなことをしているのは今、この瞬間、世界中探してもオレぐらいしかいない!と…)

 

  1000マイルのクオリファイはT.J.V.のレース委員長が指定した、ロリアン からスペイン沖のポイントを周り、Fastnet Rockを回航してロリアンに戻るというもので、GPS(yellow Blick)でそのパフォーマンスを随時チェックされるという厳格なものだった。

途中、40ノットに迫る嵐のような風に2度遭遇して、ウィンデックスを失い、メインハリヤードを故障し、スピードが鈍って1週間にも及んだけれど、無事終了してレース委員長からクオリファイ認定を受けることが出来た。

これで、私がT.J.V. に出場する候補の一人になるにはWorld Sailing 主催のメディカルコースの受講だけとなった。

  もしこの文章が世に出ているとすれば私は北さんと組んで正式に、10月27日にスタートするこの世界最高峰のダブルハンドによる大西洋横断レースをClass40<貴帆>で目指しているはずだ。そして、そのスタートを迎える日には56の私と55の北さんの歳を合わせると111歳!になっている計算だ。

  その愚を哂わらふ者はわらえばいい、私はやはり路傍の人にはなりたくない……。

2019.7.4    上野恩賜公園於
TAKESHI HARA

原健(はら たけし)
この度、Transat Jacques Vabre 2019(フランス〜ブラジル4500マイルをダブルハンド)に北田氏とダブルハンドで参戦することが決まりました。これを機に「はらたけしの…..海道をゆく」と題してコラムを連載することになりましたので、お楽しみ下さい。

2019-03-15 | 活動報告, JORA BLOG

【活動報告】JORA活動報告2018のお知らせ

Activity report in 2018こんにちは。広報堀内です。

2017年3月に創立した一般社団法人日本オーシャンレーサー協会(JORA)の活動も早2年が経過しました。まもなく3年目を迎えます。

この度、第二期の2018年活動報告を作成いたしましたのでご報告いたします。

 

 

弊会は昨年度もフランスを主としたヨーロッパでのオーシャンレースにソロ・ダブルハンドで挑む日本人セーラーを支援・育成する活動を行いました。

このような活動は全て弊会の活動にご理解を賜りました企業様、また個人の皆様からのご協賛により実現しております。改めて御礼申し上げます。

2019年も引き続き、協会設立時に掲げた趣意に向けて邁進して参ります。

今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

活動報告2017年はこちら

2019-02-25 | JORA BLOG

森村理事就任のご報告

こんにちは。JORA広報堀内です。
この度日本オーシャンレーサー協会(以下JORA)は、2018年春メルボルン大阪CUP2018(以下メルサカ)を見事完走した森村圭一朗氏を新たに理事として迎えたことをお知らせいたします。

この構想はまだJORAが発足する以前の2016年に、The Transatを完走した北田氏とメルサカに挑戦することを決めた森村氏が最初に出会った時から始まりました。

森村理事就任のご報告01

メルサカ挑戦を決意したもののそれまで本格的なオーシャンレースの経験のなかった森村氏は、共通の知人を介して北田氏に相談を持ちかけました。

外科医としてバリバリ働きながらも、メルサカに挑戦する為に新艇を購入し、勤務医を辞めてまでレースに挑戦しようとする森村氏の熱い情熱に、自分と同じくネジのぶっ飛んだ大馬鹿野郎(最高の褒め言葉)が日本にいたことに心を動かされた北田氏は、これまで積み重ねたオーシャンレースのノウハウを共有し、サポートすることを約束しました。そして無事に完走した暁には、当時構想中であった自分と同じように日本人セーラーがオーシャンレースに挑戦することを支援するJORAに、森村氏を本格的なオーシャンレースを経験したドクターとして迎え入れ、医師の目線で搭載医薬品の選定や怪我への対処などについてアドバイス出来るような体制を構築したいと考えていました。

しかしながら、オーストラリアから大阪までの5,500マイルを太平洋縦断するのは並大抵の挑戦ではありません。北田氏は森村氏に余計なプレッシャーを与えないように、ゴールするまではこの事は伝えませんでした。ただ「必ず成し遂げて欲しい」という言葉だけを送り、JORAを発足した後も陰ながらサポートを続けつつ、森村氏のレース完走をずっと待っていました。

そして森村氏が見事完走を果たされた後、北田氏は満を持してJORAの理事就任を打診しました。森村氏も以前から日本にセーリング文化を根付かせたいという思いを持ち、世界のオーシャンレースに挑戦するセーラーをサポートしたいというJORAの理念に共感していたことから快諾をいただきました。

JORAは森村ドクターを迎えたことで、更に幅の広い支援が可能な組織となります。

2019-01-24 | JORA BLOG

【2019年度JORA新年会開催のご報告】

みなさん、こんにちは!
JORA事務局がご報告致します。

1月某日、東京都内にてJORA新年会を開催いたしました。
JORA会員の皆様と弊会理事が集まり、2018年弊会の活動にご尽力いただきました皆様をお迎えし昨年1年間の活動をご報告させていただきました。
開催場所が東京になる点を考慮し日本全国にいらっしゃるJORAをご支援くださる皆様にはお声がけできませんでした。
この場を借りて新年会の模様をご報告させて頂きます。

ご参加いただきました皆様による記念撮影

昨年のメルボルン大坂ダブルハンドヨットレースに挑戦し、3月19日にスタート4月29日に完走を果たしたOHYC所属、森村氏の挑戦はJORAでも発信をさせていただきました。
森村氏は2018年より弊会理事に就任いただいており、今回は大阪からのご参加をいただきました。ドクターをされているため大変ご多忙ではございましたが、改めてメルボン大阪ダブルハンドレースをご紹介いただき、今後の展望をお話くださいました。

一足先に大阪へ戻られる森村様氏

北田氏からは今年の活動を振り返り、リタイヤとなったNormandy Channel Race参戦、広報面サポートを行ったLa Route du Rhum-Destination Guadeloupeの2レースについて、また3名のワールドセーリング講習サポートについて報告をさせていただきました。


ヨットという世界で繋がる方々が集まれば話題は尽きず会話は熱く盛り上がります。事務局一同も素敵なひと時を共有させていただきました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

今後の活動に向けJORAはまた一層、皆様のご期待にお応えできるよう邁進して参ります。
ご挨拶が遅れましたが、本年もご支援・ご声援のほどよろしくお願い致します!

RDR2018/貴帆から見た日の出

 

2019-01-05 | JORA BLOG, Media

本日発売『Kazi』2月号

明けましておめでとうございます。

いつもJORAブログをご覧いただき、ありがとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

本日は、JORA広報よりご報告です。
本日「Kazi 2月号」(舵社発行)が発売されました。
その表紙を飾るのは、昨年のLa Route du Rhum-Destination Guadeloupeへ参戦した
北田氏と貴帆のダイナミックな写真となっております!

舵社 kazi 2月号

p20~21に特集が掲載されています。

舵社 kazi 2月号

次号では北田氏のインタビューも掲載予定とのこと。
ぜひご覧ください!

【La Route du Rhum通信-番外編vol.2】

皆さん、こんにちは。
陸上班清水がお伝えいたします。

12月も残りわずかとなり、まさしく師走といった一週間をお過ごしのことと思います。
今回はLa Route du Rhum-番外編Vol.2を皆さんにお伝えいたします!

Route du Rhumのレース中にClass40スキッパーのマーク・デュボス(Marc Dubos)氏が海上から11月23日、同じく大西洋横断中の北田氏に言及したメッセージを公開していました!

オルタ島のピーターズカフェにて

北田氏とほぼ同時期の2016年からClass40のレースに出場しているマーク氏、お二人はヨットという共通点により国籍を超えた友人関係を築いています。
船番号81-Esprit Scoutは今回のRoute du Rhumで28位の成績。マーク氏を含む3名の友人でプロジェクトを立ち上げ艇名でもお分かりのように応急手当の大切さを伝えていく事をテーマに掲げオーシャンレースに参加しています。今回のRoute du Rhumの参加では、若い人たちにLa Route du Rhum-Destination Guadeloupeに参加することで、より遠くに行くことができるという見本を見せたい、同時に古くからの夢を叶えたいという気持ちがあると、友人のジャン=リュック氏は語っていました。(参考:RDR公式サイト

事務局による日本語訳と併せマーク氏のメッセージをご紹介いたします。
ぜひご覧ください!
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11/23 マーク氏からのメッセージが投稿されたFBページ

 
事務局訳:
スタートから18日目。
「気象予報によればスピンネイカーで、あまり駆け引きをしないでグアドロープ方面にいけることになっている:) しかし、島廻前の戦略選択肢はあまりない。唯一マイルを稼ぐ可能性があったので昨日は急いだ。まさしくセドリック(Cédric de Kervenoael)が上手くそうした様にね。(どうやったのかはわからないけど、なんて早さだろう。ブラボー!)
 
みんなが北田浩と順位が近いことを知らせてくれた。順位は大圏航法(サン・マロからポワントピートルまでの最短距離)による目的地までの距離で順位付けされる。この順位システムは西に行けば行くほど距離が近くなる様になる。現在私は南に進めていて、大圏航法での速度は遅い。(Class40ごとにちょっとしたベクトル計算がされるね)
 
私はこの機会に北田浩への大きな尊敬の念を伝えたいと思う。なぜなら彼は自分の夢に生きるために全く知らない世界に飛び出したのだから。日本語しか話さないというのに彼はチームを構成し、桁外れのレースプログラムに向けて船を準備した。(ザ・トランザット2016、レ・サーブル-オルタ-レ・サーブル2017、ラ・ルート・デュ・ラム2018)健康面での問題や私には想像がつかない多くの困難に耐えながら、彼はこの場に参加している。ミスター浩へのリスペクトを!彼のフィニッシュ時に立ち会えることを願っている。 マーク」
 

マーク氏(写真左)は同じくClass40セーラーのアンドレア・ファンティーニ氏(写真右)とグアドループで北田氏を出迎えました!

12月6日のフィニッシュ時にはポワンタピートルのポンツーンで北田氏を迎えてくださったマーク氏!
JORA でも現地にいないと知ることができないマリーナ情報などレースに関する様々な情報を教えていただいて、Class40コミュニティーの暖かさと大切さを実感しています。
マーク氏は次回3月23日にスタートするグアドループからオルタを経由し仏ラ・ロッシェルに向かうLe Défi Atlantiqueフルクルーレースに参加予定です!良い風を祈っています⛵️

原文:
J+18 : Cap au Sud ” Les prévisions météo doivent permettre de mettre le spi et puis direction Guadeloupe sans trop de manoeuvres ;;;;), par contre pas beaucoup d’options stratégiques avant le tour de l’île. J’ai tenté hier d’aller vite car c’était la seule possibilité de grappiller des milles, ce qu’a très bien fait Cédric de Kervenoael (je ne sais pas comment mais quelle vitesse ! Bravo !).

On me dit que 北田浩 Hiroshi Kitada est proche de moi au classement . Le classement se fait par rapport à la distance au but, rapportée sur l’orthodromie (le chemin le plus court de Saint-Malo à Point à Pitre).

Ce système fait que plus on est à l’ouest, plus on est proche de l’arrivée. Actuellement je me dirige au sud et ma vitesse sur l’orthodromie est faible (un petit calcul vectoriel sera fait en classe  )

J’en profite pour exprimer le profond respect que j’ai pour 北田浩 car il s’est lancé dans l’inconnu pour vivre son rêve.

Parlant uniquement japonais, il a constitué une équipe, préparé un bateau pour un programme extrême (the Transat 2016, Les Açores 2017 et la Route du Rhum 2018),subit des revers de santé et probablement des milliers de difficultés que je n’imagine même pas, et il est là après tout ce chemin. Respect Mr Hiroshi, j’espère être présent à ton arrivée;).

Marc”
 
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