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JORA BLOG

「はらたけしの……海道をゆく」Vol.2

7月12日トランスパックのスタート直前、私がT.J.Vの相棒に決まったと北さんからメールが入った。
正直言って私はホッとした。なにせ私は3年前に向島に骨を埋めるつもりで始めた店Cabo de Hornosを畳んだわけだから……。

今年のトランスパックは25ノットを超えるとても強い貿易風に恵まれ、高速のダウンウィンドが続いた。8日間あまりの航海の間私は存分にLady Kanon6の舵を持ってサーフィングを楽しんだ。 そして21日の未明に無事ダイヤモンドヘッド沖のフィニッシュブイを通り抜けた。幾つかのパーティーをやり過ごして身体が陸に適応し始めた頃、本格的にT.J.V.のスタートへの時計が動き出していた。

T.J.V.は1993年に第1回のレースが開催されて以来、2年に1度行われてきたダブルハンドレースの最高峰である。
ソロやダブルハンドによる外洋レースが国民的なスポーツのひとつであるフランスにおいてはセイラーにとって憧れのレースでもある。そんなレースにコ・スキッパーという名前をいただいて、北さんと二人で日本人として初めて参加できることは大変な名誉である。つくづく、私は運のいい男である……。

それにしても、このレースが初めて開催された年は私がTOKIOで参加したWhitbread 世界一周レースのスタートした年であること、そしてフィニッシュする港がブラジルであること、に因縁を感じる。
ブラジルといえばTOKIOが断然の総合トップでスタートした第5レグにおいてディスマストして緊急入港したのがサントスの港で、その後ジュリーリグでヴィトーリアという港に移動してニュージーランドから届けられた新しいマストのセクションを48時間の不眠不休で立ち上げ再スタートした場所だった。
当時、総合タイムのみで争われた世界一周レースではディスマストはイコール敗北を意味した。だから私にとってブラジルとはサッカーをしていた時代は憧れの国であったけれど、26年前には入らざるべくして入った国だった。

今回のT.J.V.のフィニッシュ地点はブラジルの最初の首都であり、サンバが生まれた場所として知っていたサルヴァドールである。私としては、TOKIOで味わった悔しさを払拭して、このレースを出来る限りの充足感と共にこのブラジルの古都に上陸を果たしたいと思っている。

レースはMulti50とImoca60とClass40の3つのカテゴリーに分かれていて、現在、Class40には 28チーム 56名のエントリーが発表されている。

年齢で言えば、私たちは最も高齢で北➕原=111歳であるが、それを111%のパフォーマンスに変えて、少しでも大西洋の猛者たちを驚かせてやりたいものだ。
この大会HPに発表されたメンバーの一人として、気がつけば “オジサン” と呼ばれる年齢の一人として、そして外洋レースに魅せられた日本人の一人として、存分にこのレースを楽しみたい。
https://www.transatjacquesvabre.org/en/skippers/class40

今、私はハワイヨットクラブのバーカウンターでマジックアイランドの向こうに沈んでいく夕陽を眺めながら、ビスケー湾の悪い波や、赤道無風帯ドルジュラムや、南半球の貿易風や、サンバの太鼓の響きを思い浮かべながら心臓の鼓動を感じている。それはまるで、カウントダウンの音であるかのようだった……。

2019.7.28. ハワイヨットクラブ於

TAKESHI HARA

原健(はら たけし)
この度、Transat Jacques Vabre 2019(フランス〜ブラジル4500マイルをダブルハンド)に北田氏とダブルハンドで参戦することが決まりました。これを機に「はらたけしの…..海道をゆく」と題してコラムを連載しております。ぜひお楽しみ下さい。

はらたけしの……海道をゆく

2019-07-25 | JORA BLOG

「シーサバイバル&メディカル・トレーニング➕Plus」ご案内

シーサバイバル&メディカル・トレーニング➕Plus

一般社団法人 日本オーシャンレーサー協会(JORA)主催
ワールドセーリング公認コース

「シーサバイバル&メディカル・トレーニング➕Plus」ご案内

 本講習会はワールドセーリングOSRカテゴリー0,1,2のレースで要求されるトレーニングをわが国で初めてフルスペックで行うものです。今後日本国内で日本人トレーナーによる同トレーニングの継続的な開催を目指したトライヤルコースとしてJORAとワールドセーリングの認定機関C.E.P.S(フランス、ロリアン)の共同企画で実施されます。
 今回はC.E.P.Sのトレーナー2名、JORAの日本人医師1名による講習と、施設はわが国で唯一STCW(プロの船員や作業者を対象とするサバイバルトレーニングの国際基準)の認定を得た日本サバイバル・トレーニングセンター(NSTC:北九州)で行い、同施設の専属トレーナーがアシストします。さらにJORAが3年間のヨーロッパでの活動で得た知見を盛込んだ➕Plus企画として開催されます。


【日程】
 9月14日(土) 10時~19時 サバイバル講習 座学(フランス人講師・通訳有)
   15日(日) 9時~17時 サバイバル講習 実技(同上およびNSTC所属トレーナー)
   16日(祝) 9時~15時 メディカル・トレーニング(日本人医師講師、フランス人講師監修)

【開催場所】
 福岡県北九州市戸畑区銀座2-6-27 ニッスイ戸畑ビル4階
 日本サバイバル・トレーニングセンター
 http://n-s-t-c.com/

【宿泊】
 同所内宿泊施設

【受講費用(初回限定)】
 サバイバル講習  2日間 7万円(宿泊、朝、夕食含む)
 メディカル講習まで3日間 8万円(宿泊、朝、夕食含む)
 いずれもワールドセーリングの認定証発行(5年間有効)
 昼食は別途負担

【最大受講者数】
 20名(10人×2グループ)、フランス人講師2名、日本人医師1名

【問い合わせ先】
 info@jora.or.jp
 お問い合わせはメールでお願いいたします。

上記資料をダウンロードする場合はこちら

資料PDF版

「はらたけしの……海道をゆく」Vol.1

” 人間は、時として、充たされるか充たされないか、わからない欲望の為に、一生を捧げてしまふ。その愚を哂わらふ者は、畢竟、人生に対する路傍の人に過ぎない。”

遠い昔に読んで以来、ずっと頭の片隅に棲み続けている芥川龍之介の「芋粥」に出てきたこの言葉がまた、よりによってこんな時に浮かんできた。

 

こんな時に、というのはアイルランド南端のFastnet Rockを目指して残り200マイルほどの大西洋上でヨットのマストップに上っている時ということ。突然失ったメインハリヤードの修理で上る羽目になったのである。

クライミングハーネスを付けてマストに上るなど、とうの昔に卒業していたはずだったが、その故障の瞬間、自然に、マストに上ることが私のやらねばならない命題となった。

Fastnet Rock

Fastnet Rock
30年前の1989年にFastnet Race で回航して以来だった。回航時に40ノットの風の洗礼を受けたレース後プリマスのホテルで、もう2度と外洋レースなどするまい、と誓ったのだったが……。どこか神子元島に雰囲気が似ている妖しく荘厳な雰囲気の灯台である。

 

遡れば3月の末、私がやっていたバー Cabo de Hornos に突然北さん(北田)が現れた。

後で聞けばボートショーの流れで、宜野湾に住む私の友人である伊良波一郎との待ち合わせだった。その夜珍しく私の店は繁盛して、北さんともカウンター越しに何杯もウィスキーを飲み交わした。

それ以降、私の店のイチオシメニューだったキーマカレーを食べに何度か店に足を運んでくれて、彼の今までしてきたClass40による北大西洋でのシングルハンドの冒険談をたくさん聞くことができた。そして今年10月末にスタートするダブルハンドの大西洋横断レースTransat Jacques Vabre (フランスのル・アーブル〜ブラジルのサルバドール間の4500マイル)の相棒を探しているという話を聞いたのだった……。

 

  その話を聞いて以来、私はバーの仕事が手につかなくなった。25年以上も前に、クリス・ディクソンからWhitbread 世界一周レースの誘いを受けた時の心地が蘇った。

 

既にクオリファイ済みの何人かの相棒候補とは違い、たったの1度も北さんとレースどころかセイリングすらしたことのない私には1000マイルのクオリファイが必要だったので、6月の後半にフランスへ渡り彼とダブルハンドでのトライアルセイリングに出かける必要があった。 7月と8月はLK6でTranspac 出場と日本へのデリバリーの仕事が決まっていたから、6月のフランス行きと、もし T.J.V. の相棒に決まりその準備とレースに費やされる9月から12月初旬まで入れれば、約半年は店を休まなければならなかった……。

 

何の保証も約束もなかった。しかし何の迷いもなく、と言えば嘘になるが、私は4月の後半には店を閉めることを決めていた。そして6月1日に閉店後、ブルターニュ半島の南の付け根に位置する、フランス外洋レースの聖地とも言えるロリアンに向かったのだった……。

 

  揺れ続けるマストのてっぺんで、なんとかメインハリヤードの修復を済ませて西の空を見渡すと、遥か水平線の彼方には通り過ぎていった嵐が連れて行った雲が朝陽で橙色に色付けされて輝いていた。そして、こんな時いつもこう思うのだ。

(こんなバカなことをしているのは今、この瞬間、世界中探してもオレぐらいしかいない!と…)

 

  1000マイルのクオリファイはT.J.V.のレース委員長が指定した、ロリアン からスペイン沖のポイントを周り、Fastnet Rockを回航してロリアンに戻るというもので、GPS(yellow Blick)でそのパフォーマンスを随時チェックされるという厳格なものだった。

途中、40ノットに迫る嵐のような風に2度遭遇して、ウィンデックスを失い、メインハリヤードを故障し、スピードが鈍って1週間にも及んだけれど、無事終了してレース委員長からクオリファイ認定を受けることが出来た。

これで、私がT.J.V. に出場する候補の一人になるにはWorld Sailing 主催のメディカルコースの受講だけとなった。

  もしこの文章が世に出ているとすれば私は北さんと組んで正式に、10月27日にスタートするこの世界最高峰のダブルハンドによる大西洋横断レースをClass40<貴帆>で目指しているはずだ。そして、そのスタートを迎える日には56の私と55の北さんの歳を合わせると111歳!になっている計算だ。

  その愚を哂わらふ者はわらえばいい、私はやはり路傍の人にはなりたくない……。

2019.7.4    上野恩賜公園於
TAKESHI HARA

原健(はら たけし)
この度、Transat Jacques Vabre 2019(フランス〜ブラジル4500マイルをダブルハンド)に北田氏とダブルハンドで参戦することが決まりました。これを機に「はらたけしの…..海道をゆく」と題してコラムを連載することになりましたので、お楽しみ下さい。

2019-03-15 | 活動報告, JORA BLOG

【活動報告】JORA活動報告2018のお知らせ

Activity report in 2018こんにちは。広報堀内です。

2017年3月に創立した一般社団法人日本オーシャンレーサー協会(JORA)の活動も早2年が経過しました。まもなく3年目を迎えます。

この度、第二期の2018年活動報告を作成いたしましたのでご報告いたします。

 

 

弊会は昨年度もフランスを主としたヨーロッパでのオーシャンレースにソロ・ダブルハンドで挑む日本人セーラーを支援・育成する活動を行いました。

このような活動は全て弊会の活動にご理解を賜りました企業様、また個人の皆様からのご協賛により実現しております。改めて御礼申し上げます。

2019年も引き続き、協会設立時に掲げた趣意に向けて邁進して参ります。

今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

活動報告2017年はこちら

2019-02-25 | JORA BLOG

森村理事就任のご報告

こんにちは。JORA広報堀内です。
この度日本オーシャンレーサー協会(以下JORA)は、2018年春メルボルン大阪CUP2018(以下メルサカ)を見事完走した森村圭一朗氏を新たに理事として迎えたことをお知らせいたします。

この構想はまだJORAが発足する以前の2016年に、The Transatを完走した北田氏とメルサカに挑戦することを決めた森村氏が最初に出会った時から始まりました。

森村理事就任のご報告01

メルサカ挑戦を決意したもののそれまで本格的なオーシャンレースの経験のなかった森村氏は、共通の知人を介して北田氏に相談を持ちかけました。

外科医としてバリバリ働きながらも、メルサカに挑戦する為に新艇を購入し、勤務医を辞めてまでレースに挑戦しようとする森村氏の熱い情熱に、自分と同じくネジのぶっ飛んだ大馬鹿野郎(最高の褒め言葉)が日本にいたことに心を動かされた北田氏は、これまで積み重ねたオーシャンレースのノウハウを共有し、サポートすることを約束しました。そして無事に完走した暁には、当時構想中であった自分と同じように日本人セーラーがオーシャンレースに挑戦することを支援するJORAに、森村氏を本格的なオーシャンレースを経験したドクターとして迎え入れ、医師の目線で搭載医薬品の選定や怪我への対処などについてアドバイス出来るような体制を構築したいと考えていました。

しかしながら、オーストラリアから大阪までの5,500マイルを太平洋縦断するのは並大抵の挑戦ではありません。北田氏は森村氏に余計なプレッシャーを与えないように、ゴールするまではこの事は伝えませんでした。ただ「必ず成し遂げて欲しい」という言葉だけを送り、JORAを発足した後も陰ながらサポートを続けつつ、森村氏のレース完走をずっと待っていました。

そして森村氏が見事完走を果たされた後、北田氏は満を持してJORAの理事就任を打診しました。森村氏も以前から日本にセーリング文化を根付かせたいという思いを持ち、世界のオーシャンレースに挑戦するセーラーをサポートしたいというJORAの理念に共感していたことから快諾をいただきました。

JORAは森村ドクターを迎えたことで、更に幅の広い支援が可能な組織となります。

2019-01-24 | JORA BLOG

【2019年度JORA新年会開催のご報告】

みなさん、こんにちは!
JORA事務局がご報告致します。

1月某日、東京都内にてJORA新年会を開催いたしました。
JORA会員の皆様と弊会理事が集まり、2018年弊会の活動にご尽力いただきました皆様をお迎えし昨年1年間の活動をご報告させていただきました。
開催場所が東京になる点を考慮し日本全国にいらっしゃるJORAをご支援くださる皆様にはお声がけできませんでした。
この場を借りて新年会の模様をご報告させて頂きます。

ご参加いただきました皆様による記念撮影

昨年のメルボルン大坂ダブルハンドヨットレースに挑戦し、3月19日にスタート4月29日に完走を果たしたOHYC所属、森村氏の挑戦はJORAでも発信をさせていただきました。
森村氏は2018年より弊会理事に就任いただいており、今回は大阪からのご参加をいただきました。ドクターをされているため大変ご多忙ではございましたが、改めてメルボン大阪ダブルハンドレースをご紹介いただき、今後の展望をお話くださいました。

一足先に大阪へ戻られる森村様氏

北田氏からは今年の活動を振り返り、リタイヤとなったNormandy Channel Race参戦、広報面サポートを行ったLa Route du Rhum-Destination Guadeloupeの2レースについて、また3名のワールドセーリング講習サポートについて報告をさせていただきました。


ヨットという世界で繋がる方々が集まれば話題は尽きず会話は熱く盛り上がります。事務局一同も素敵なひと時を共有させていただきました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

今後の活動に向けJORAはまた一層、皆様のご期待にお応えできるよう邁進して参ります。
ご挨拶が遅れましたが、本年もご支援・ご声援のほどよろしくお願い致します!

RDR2018/貴帆から見た日の出

 

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