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JORA BLOG
2020-04-02 | JORA BLOG

幸希と愛の200マイルトライアルレポート

こんにちは。JORA海外会員としてトレーニングに励んでいる松苗幸希さんと吉富愛さんが、3月某日200マイルトライアルを成功させました。お二人のレポートと動画をお楽しみください。

*この200マイルトライアルはコロナウイルス(COVID-19)による移動自粛要請前に行われています。

 

【松苗幸希レポート】

今回は200マイル無寄港セーリングを体験させて頂きました。
200マイルという距離はヨットで走るとおおよそ丸2日間くらい走る距離であり、夕方4時ごろに出港して2回夜を超えるといういわゆる2オーバーナイトというセーリング は初めての経験です。
メンバーはオーシャンセーラーの北田さん、大学生にして一人で本州1周の経験を持つ吉富愛さん、そしてオフショア数回経験ありの私の3名。
今回はJORAの森村副代表所有艇で大阪北港にあるデへラー(DHL38)という艇を使わせて頂きました。
もしも海が荒れたら…とかなりの不安がありましたが、とてもいい艇だと聞いていたことを頼りに安心材料としました。

当日は関東から朝一で西宮に移動し、昼前に準備を進めてもらっていた皆さんと合流、念のため2日半くらいの食料の買い出してそのまま出発という素人的にはタイトと感じられるスケジュールで出港しました。
私の今回の一番の目標はナイトセーリング をまずは知るということでした。
過去の経験で真っ暗闇の中でヘルムを取るということがいかに難しいかを知っていたからです。
また、1オーバーナイトは今までに2回ほど経験させて頂いたことがありましたが、”ワッチを組む”という作業が初めてだったので短時間睡眠で自分の身体がどれだけ持つのかということにも興味がありました。

今回のトレーニングは基本的に女子2人で全てやり、北田さんは何かあった時の補助であるという方針でした。 初めて一緒のヨットに吉富さんとオフショアド素人の私のチームはどんな珍道中になるかと思いましたが、吉富さんがセールのリーフも計器の使い方もテキパキこなしてくれたので外洋ヨット部って流石だな、1人で本州1周しただけあるなとすぐに感じることが出来、一緒に乗れることにワクワクしました。
夕方前の出港だったので、割とすぐに夜を迎えることになり、さっそく夜の緊張モードに気持ちを切り替えます。
完全に暗くなる前から風が少しずつ強くなり始め、目的地に対して上りのレグであったことから艇のヒールとこのピッチングと共に夜を迎えるのだろうということが想像できました。
まずは吉富さんとワッチの時間配分をどうするか話し合いました。多くの人はだいたい2〜3時間おきに交代するということを聞いていましたが、まずは1時間から試して、明日の夜は2時間にするという取り決めになりました。
20時を越えるととにかく暖まりたいという気持ちしか生まれない状況になってきました。寒い、揺れる、眠いのトリプルパンチの中、初めてヨットの帆走中に睡眠を取るというワッチオフを経験することとなりました。3月中旬の関西はそこまで寒くならないだろうという考えは全くもって甘く、想像を遥かに超える寒さとなり、ワッチオフの順番が来るとすぐにトイレを済ませ、カッパを着たまま震えながらベッドに倒れ込みオフショアやってみたいと思った自分バカー!と思いながら目を瞑りました。 しかし、1時間交代なのですぐにワッチの順番が回ってきます。やっとの思いで目を瞑る体制になったのに起きて時計を見ると1時間しか進んでない…これを夜の間6交代もするのは気持ちが持たない‼︎と思いこれは絶対正解じゃないということがわかりました。 2時間交代に切り替えてみたところ、こちらは正解。もしかしたら3時間でもいいかもしれません。
少し気持ちも楽になってくると、1人で他の船舶にぶつからないか、自船は目的地から逸れていないかと監視する緊張感を感じられるようになり、普段味わえないスリル楽しみながら過ごすことが出来ました。

朝を迎え、気象状況はかなり穏やかになり、気温もカッパを全て脱ぐくらいまで上昇し、夜に比べると本当に天国でした。
昨晩の寒さと揺れでかなり疲れたのか日中のポカポカ陽気では居眠り(というか爆睡)を多くしてしまいました。
GPSを見てみると昼ごろにどうやら目的地の徳島沖に到達したみたいでしたが、ワッチオフや居眠りでいつのまにか周りに陸地が全く見えない場所まで来ていたので、自分の位置の把握もとても難しいなと感じました。
しかも、折り返し地点、やっとジェネカーランで帰れると思ったら風向きが真逆に変わり、またもや上りとなってしまい、走りとしては少し物足りなさが残りました。

天気も良く、船の揺れもない。環境が良くなってくるとだんだんお腹が空いてきます。
噂で聞いていた通り、洋上でのごはんは普段は食べないカップラーメンもただ焼いただけのウインナーもめちゃくちゃ美味しく感じることが出来、洋上の醍醐味です。
おやつも進みます。
私達3人全員が納得したふんわりきな粉名人。

ふんわり名人きなこ餅

ふんわり名人きなこ餅

のんびりと船を進め、2日目の夜が近づいてきました。
夕方近く陸地に大分近づいて来たところでいい風が入り、今回試したかった計器を使って帆走することと、今までディンギーで感じていた感覚を数値で見ることが出来ました。
この感覚を数値化するという作業は、いつかやってみたいな、これがわかればどんなヨットでも早く走らせられるのではないかという考えのもと試すことが出来たのは自分にとってとても良い収穫でした。
そして最後の最後には計器の数値と感覚を合わせてこの感じかな?と思えるコツを掴んだ気がしたのですが、後にわかったことですが計器は海に出て最初に細かい設定をしないと正確に使いこなすことが出来ないらしいのです。
非常に奥が深すぎる世界でありますが、だからこそ勉強しがいのあるジャンルだなということを感じました。
その後無事に朝4時に到着し、早朝にも関わらず使用させて頂いた艇のクルーの富田さんがお迎えに来てくださりました。それから一眠りさせて頂いている間に森村オーナーさんや135イーストの蔵田さん、計器の調整の太田さんなどが集まっており沢山の方が支えてくださっていたことがわかりました。

計器の設定の仕方なども教えて頂き、とても貴重な知識を教えて頂くことが出来ました。
ご指導、ご協力頂きありがとうございました。また機会があれば、今回勉強できなかった気象の理解を深め、思った通りに天気がやってくるようになることがこれからの目標です。

【吉富愛レポート】

2オーバーナイトの200マイル無寄港練習を行った。私にとって無寄港長距離での最長であった。

出航後は安定して南から6〜9ktの風が吹いており、ジブでタックを行いながら友ヶ島水道を目指す。その中ではオートパイロットの感度の調整や、モードチェンジなどを行い、航海計器の使い方を研究しながらのセーリングを行った。

夜の航海では松苗さんと二人で一時間ごとのワッチを組み行う。しかし、一時間では疲れが取れず、深夜に二時間ごとのワッチに切り替えた。夜の航海では注意点がいくつかあった。暗い中で作業を行うため、暗くなる前の準備が大事になる。また友ヶ島水道での航海では、大型船や漁船との灯火による自船との見合い関係が難しいとワッチの際に感じた。

慣れないオーバーナイトがあけ、日中は風がないセーリングになった。休憩できる時に休憩するということで風が弱い日中を使い、しっかり休憩をとり2日目の夜に備えた。2日目は夕方ごろから風が吹いてきた。そこからは昼に休憩したことにより、夜のセーリング練習もしっかり取り組むことができた。どこで休憩を取るかが大事であると思った。この時は一度だけ二時間ワッチを組み、それ以外は最後まで二人でのセーリングの練習を行った。その中で航海計器を見ながらクローズホールドに持っていくなど実験を行い船を知るにはいい勉強になった。

この船は今回の練習が初めてであったため、ものの使い方や航海計器の使い方をしっかり知ることができる良い機会になった。また、初めての長距離であったため自身の体調管理、体力温存方法、船での過ごし方を知る機会になった。

自身の次の課題も見えた。今回の経験をプラスに今後はより体力をつけどんな時間帯でも動けるように調整をしていきたい。また継続してセーリングに集中できるための体力が必要に感じた。今回は風向き的にジェネカーはあげなかったため次回の練習ではダウンウィンドの練習をしっかり行いたい。

幸希と愛の200マイルトライアル

幸希と愛の200マイルトライアル

松苗幸希:北海道札幌市出身。49erFXでの活動を中心として、 国体、 キールボート(クルーザ一)でマッチレ一スや外洋レ一ス、北海道、関東の中高大学生のコ ーチングも行う。

詳細はこちら→ Sailors 松苗幸希

 

吉富 愛:大阪府出身。神戸大学在学中。フランスマルセイユで行われた世界選手権での経験から、2019年神戸大学在学中にニュージャパンヨットのSOLEIL LEVANT(26フィート)に乗りシングルハンドで本州一周を達成させた。

詳細はこちら→ Sailors 吉富愛

2020-03-25 | JORA BLOG

吉富愛の本州一周レポート

こんにちは。JORA海外会員としてトレーニングに励んでいる吉富愛さんの自己紹介を兼ねた記事をお届けします。吉富さんは昨年シングルハンドで本州一周を成功させました。将来有望な若きセーラーの冒険をお楽しみください。

吉富愛と申します。私は昨年の夏(2019/07/21~2019/10/8)に単独ヨット本州一周を行いました。
ヨットは26フィートのニュージャパンヨット ソレイユ・ルボンです。

本州一周中の全ての寄港地での日々のブログURLはこちらになります。→ aiai9521.blogspot.com
本州一周中の様子はブログで知っていただければと思います。

今回はなぜ本州一周をしたのかを書かせていただきます。

私が本州一周する理由は大きく分けると2つあります。
1 ヨットの世界、海を知りたい
2 有言実行

1 ヨットの世界、海を知りたい

私は大学に入り、クルーザーヨットに出会いました。
顧問の先生、先輩たちに恵まれ、どんどんヨットの世界に引き込まれていき、
そして、私を大きく変えたのは、部活から出させていただいた、
学生外洋帆走世界選手権。
フランスのマルセイユで行われ、そこで見たものは日本では考えられないヨットのマストの数!巨大ヨット!それを自由気ままに乗りこなすヨーロッパの人々、とても自由で、楽しそうでした。
また、海外の方々との交流、スポンサー集めなどで多くの社会人の方との交流を通して、多くのことを考えさせていただく貴重な経験になりました。

フランス・マルセイユ

フランス・マルセイユ

Student yachting World cup

Student yachting World cup

このような体験を通じ、私は大学生という半分大人のとても自由がきく時期に、もう少し自分の人生を考え直し人生を再計画してもいいのではと思いました。
再計画する中でもっと自分が人生において深めたいこと知りたいことは何だろうかと思ったところ、ヨットや海の世界になりました。

2 有言実行
私は今までの20年間、気づけば、自分でやりたいことを、何か理由をつけては諦めてきました。
そんな自分にあまり自信が持てなかったです、、
なら、この休学は有言実行の一年にしようと思ったのです。
何か自分の発した言葉に責任を持ち、必ずやり遂げようと思いました。

その中で私のしたい事、好きな事は
長期でヨットに乗りたい、ヨットをもっと知りたい、自分が生きている日本を知りたい。

よし!全てやろう!

ヨットと、ともに旅に出る

ヨットと、ともに旅に出る

そして、ヨットと、ともに旅に出ることになりました。

チャレンジしたいと思い飛び出してしまった、私を全国の皆さんが優しく受け入れてくださり、またこのような自由奔放を許してくれた親、多くのサポートをしてくださった方々、本当にありがとうございました。この本州一周では多くの方に出会い、助けていただき達成できました。素敵な経験をさせていただき感謝の気持ちでいっぱいです。

この経験で見たもの、感じたものは沢山あります。私がこれからも大事にしていきたいものは好きなものへの情熱です。この経験で得たことを次のチャレンジや次の目標に繋げていきたいと思います。

また下の文章では、大学生活で顧問の先生から学んできた“冒険教育”をもとにこの経験で得たものをまとめたため、この場でも共有させていただきたいと思います。一人でも多くの方に共有をしたいと思い英語で書きました。読んでいただければ嬉しいです。

(*英語バージョンは紹介文の下にあります。There is English version below the introduction.)

吉富愛

吉富 愛:大阪府出身。神戸大学在学中。フランスマルセイユで行われた世界選手権での経験から、2019年神戸大学在学中にニュージャパンヨットのSOLEIL LEVANT(26フィート)に乗りシングルハンドで本州一周を達成させた。

詳細はこちら→ Sailors 吉富愛

[English version]

“adventure education”
Firstly, let me introduce myself. My name is AI. My major is navigation of maritime science. I like yacht and sailing. I have been to some countries to join yacht race.
Also, I went around japan by yacht alone last year for 3 month. I had have precious experiences.
I’m going to share to you about “adventure education” based on my experience
Adventure education is defined that after people success adventure, they develop various things. Such as changing action for people, planning our own life and improving to realize ourselves.
Also, It is important for adventure education to experience in real. This is not the same as normal education such as writing, reading.
adventure education does not have to be like challenge of mine. It can be easier. For me, if the challenge you will try have these two features, it can be the adventure education. For example, sailing, camping and climbing mountain can be applied for adventure education.
I chose sailing in adventure education. An interesting point of sailing is that ship can be moved only by wind. It requires various techniques. For example, techniques of repairing ship, and navigation.
And we can see many beautiful views of nature through sailing.
We can travel anywhere with ship. I think this is one of attractive points of sailing.
Why did I go around Japan by ship alone last year.
There are three reasons, first reason is because I like ship and I want to live on the ship for long time. Second reason is that I wanted to learn more about sailing.
Also, it is because I wanted to challenge.
However, many people opposed to this challenge. They said you cannot do it.
Because this challenge is dangerous. If ship had trouble, I needed to repair this by myself and nobody could help me.
But I rejected it. Because I like sailing and I did not want to give up.
So I decided to challenge.
After I decided, many people helped me. I think this is because I have a big passion for sailing. so I learnt that passion is important to challenge.
Now I am proud of my choice.
Throughout traveling, I had many opportunities to meet local people , see beautiful views and eat local food.
While I was sailing, I learned many things by talking with many local people. For example, their cultures, problems , life stories in japan.
In addition, many local people have helped me through this experience. I was so happy . If they were not , I could not achieve this.
Thanks to this experience, I got more compassion for people. This leaded me to change my communication style and get to know way of helping people.
In sailing, my favorite time was lunch time! I cooked lunch box. in a kitchen on the boat. Because of this, I developed my cooking skills. Moreover, local people gave me good local food like fresh tomato and salmon roe!! I was so happy. Thank you for giving me.
Furthermore, I could see many beautiful views on the ship. It was more beautiful and magnificent than expected. By seeing many beautiful views, I found that Japan is beautiful.
Let me tell you about one story here. When I saw sunset one day, I cried unconsciously. I think I felt happy from the bottom of my heart in this moment. I was also happy that I could feel like that and also surprised at this experience. This experience is precious.
In summary, I got more compassion for people, developed my cooking skills and felt happy with my heart. I think, because of these learnings, my life has changed.

On the other hand, I also had many troubles throughout traveling by the ship.
For example. If I cannot judge the changing tide of the sea, this lead me got involved in the trouble of uncontrollable situation, Moreover, if the thunder strikes my ship, my ship would sink under the water. So I have executed navigation in order to cope with this problems. Navigation is prediction of weather and planning of voyage so that I can sail safely by precise prediction and fast judgement. For example, when I met big wave, I was not dangerous because I expected that I met big wave by navigation.
Thanks to this experience of navigation, I could learn how to choose important information for prediction and planning from much information.
I also had have many engine troubles on the ship. Due to this, I laughed and cried a lot. Sometimes, It took even 4 hours to repair engine pass way of the sea, It was hard lonely. However, I could not give up because if I gave up, I could not go home. So I kept trying to repair the engine by understanding the system of engine with never give up spirit. Through this experiences, I could get never give up spirits. Also, I could notice that I can utilize the experience in daily life.
In summary, I could learn how to choose important information from much information and could get never give up spirit through these difficulties.
So what can adventure education gives us the most?
I think Adventure Education makes us captain of your own life.
This means, you become able to plan your life plan, live based on the life plan and have every responsibility for your own life.
So how and why can we be the captain of your own life by adventure education?
As mentioned, Adventure Education is what gives us better way of thinking, better life planning and more Self-awareness.
In real, as for better way of thinking, I got compassion for people because many people have helped me. This changed my behavior for people better, As for better life planning, I come to think things positively like I can do all things because I notice that I can do anything if I never stop seeking solution. This make my options for life wider.
Finally, as for Self-awareness, I become to be able to express myself and got confidence because I faced to myself including my weaknesses throughout this travel. This confidence encourage me to next challenge.
So you can be the captain of your own life because you can learn these things.
In addition to this, you can get these hard skills and soft skills by adventure education. Therefore, you can get a lot of skills which is important to live better life by adventure education, and you can be the captain of your own life.
you might feel that you do not know how you want to try to have adventure education. I think that adventure is exploring something you can be passionate. There are several ways to find your passion, for example your personal experience and of course SWY. Adventure education might be one of the option too. So you can start your adventure education with what you can be passionate.
also, if it is possible, It is important for adventure education to experience in real with nature.
If you want to be life captain, you can experience “adventure education”. And while adventure education, please do not forget to enjoy the process of it because it is adventure.
Finally, last message from me. The reason why I have this presentation is that I want to spread this idea of adventure education to children because I want to them to have more exciting life in the future by getting back ground. So please share this idea with your friends, family and children after this seminar.
Shall we go on an adventure??

西村一広のJORAロリアンClass40合宿/WS安全講習受講レポート(2020年2月10日〜2月18日)

こんにちは。松苗幸希さんの「幸希が行く」シリーズいかがでしたでしょうか。ロリアン編の最後を締めるのは帯同しているセーリングコーチの西村一広氏のレポートです。お楽しみください。

文:JORAコンサルタント&コーチ 西村 一広氏

今回のロリアンClass40合宿/WS安全講習受講メンバー

JORA代表 北田浩
JORA支援セーラー 松苗幸希
JORAコンサルタント&コーチ 西村一広
JORAサポートスタッフ/通訳 パトリッツィア・ゾッティ(在フランス)

2020年最初のJORAキャンペーンとして、PRIMO CUP2020(プリモカップ2020。モナコヨットクラブ主催。2020年2月6日〜9日)に、L 30クラスで参加した後、フランスのロリアンに移動し、1週間の合宿に入った。メンバーは、現地サポートと通訳が結城麻菜さんからパトリッツィア・ゾッティさんに交代し、他の3人は引き続き同じメンバー。

今回のロリアン合宿の、主な目的は二つ。

一つはJORA支援セーラー松苗幸希選手に、L 30クラスと比べて、サイズもパワーもスピードも数段上のクラス40でのセーリングを、コーチ陣が指導の上で経験させること。もう一つは、ワールドセーリング公認の安全講習とメディカルトレーニングを松苗選手が受講して、外洋レース中に事故を起こしたとき、事故に遭ったときに、生存の可能性を高めるために、適性に行動できる技術と知識を身に付けるとともに、ヨーロッパでのカテゴリー2以上の外洋レースに参加するために必要な資格を得ること。

松苗選手のクラス40でのセーリングでは、JORAの北田代表、フランス現地スタッフのパトリッツィア・ゾッティー、コーチの西村に加えて、クラス40トップセーラーの1人Louis Duc(ルイ・デュック)選手(フランス)も乗艇して、4人の指導者陣が松苗選手をサポートする体制が取られた。

ウォーターバラストを左右入れ替えながらのクローズホールド、複雑なアンファーリング、ファーリング技術が必要なジェネカー操作、クラス40ならではのパワフルなダウンウインドなど、短期間ではあったが内容の濃いセーリングができた。ロリアンはフランスのブルターニュ半島先端近くに位置する、大西洋に面した港町。冬のこの時期の大西洋は厳しいコンディションが続くが、有効なトレーニングができるコンディションを選んだことで、クラス40に初めて乗る松苗選手にとっては特に、実り多いセーリングになったと思う。

Class40でのセーリング

Class40でのセーリング

Louis Duc(ルイ・デュック)選手も加えた充実した指導者陣

Louis Duc(ルイ・デュック)選手も加えた充実した指導者陣

合宿後半は、ワールドセーリング公認の安全講習&メディカルトレーニング(連続3日間)に当てられた。このトレーニングの詳しい内容と、その講習の様子については、松苗幸希さんのレポートを参照してもらいたい。

ロリアンには大西洋横断レースから帰ってきたたくさんのクラスミニ6.5mや、トレーニング中のフィガロ3艇団、クラス40艇団、最新鋭のIMOCAクラスなどが揃い、それぞれが平日・週末を問わずセーリングに明け暮れている。その様子を間近に見ながら合宿した松苗選手には、ヨーロッパにおけるオーシャンゴーイングの本格的外洋レースの人気の高さ、認知度の高さを知っただけでも、今後の活動に向けて、得るところが大きかったはずだ。

ロリアンにて松苗選手と

ロリアンにて松苗選手と

幸希が行く【ロリアン サバイバルトレーニング編】

皆さん、こんにちは。

先日JORAに初の女性海外会員として、2月6日〜9日にモナコで開催されたPRIMO CUP – CREDIT SUISSE TROPHYレースに参加された松苗幸希さんからのレポート「幸希が行く」シリーズ。貴帆体験試乗の後はミッションの一つであるサバイバルトレーニング(2月13〜15日開催)に参加しました。ロリアン編後半お楽しみください。

文:松苗 幸希氏

ロリアン滞在4日目。ミッションの一つであるサバイバルトレーニングが始まりました。

朝8時から夕方5時までの講習が3日間と長時間のスケジュールが組まれていたので、安全に対する真剣度合いが私の知っている形だけのものとは違うなということが感じられました。

講習の初日はメディカルトレーニングと、緊急脱出の際の知識がメインでした。 メディカルに関してはセーリングのインストラクター資格取得の際にやったことがある内容と似ていたので久しぶりにいい復習になりました。 緊急脱出に関することは全てが知らないことばかりで、特に通信機器関係は基本的な知識がなさすぎて、用語も知らないしどれがどんな通信方法なのかもわからず完全に苦手分野でした。

講習は全てフランス語で進められるので通訳のパトリシアさんを介しての学びとなり、通訳さんを通して何かをするということも初体験をすることが出来ました。 英語なら何となくわかる単語と話し手の表情で理解してきたのに、一言も単語がわからない言語になると表情を見ても全くわからないものだなと妙に新しい発見がありました。 逆に英語が堪能ではない国で遭難、救助が必要になった場合はすごく大変だろうなということも想像出来ました。

サバイバルトレーニング実技準備中

サバイバルトレーニング実技準備中

1日目に習ったことを踏まえて、2日目は実技でした。
プールで何かすると聞いていたので海猿的なキツイ泳ぎをやるんじゃないかと想像していて、体力的に付いていけるかなぁとか、震えるほど寒いんじゃないかなとか不安でしたが、実際やってみるとサバイバルスーツの形のユニークさや、水温もそこまで冷たく感じなかったので不安は吹き飛びました。
本当に遭難したらそれどころじゃないんだろうけど、サバイバルスーツのウルトラマンのような、スッパマンのようなシルエットはちょっと笑えて、一緒に受講したみんなはノリノリで写真撮影をしていました。

サバイバルスーツを着てみんなで撮影

サバイバルスーツを着てみんなで撮影

講習が始まるとまず、ライフラフトと呼ばれる膨張性の屋根付き救命いかだを実際に膨張させるところから始まりました。
通常はハードなアタッシュケースみたいなものに収納されていますが、ケースに付いてるロープを引っ張っていくとケースから飛び出て勝手にシュ〜〜ポンッッ!!と膨らみます。
なんとなくケースは見たことはありましたが、アレに本当に救命艇が入ってたんだ‼︎という驚きが凄かったです。
膨らんだライフラフトに乗り込んで待つときの姿勢や、もしも転覆してしまった場合の起こし方などを練習しました。

ライフラフトで実習

ライフラフトで実習

一番の経験はヘリコプターを想定したクレーンで体を引き上げられたことです。
救助用の輪になったベルトに体をくぐらせ、脇をしっかり閉めたら手サインを送って引き上げてもらいます。
実際に引き上げてもらうと、濡れたサバイバルスーツの重さもあって意外ときつく、もしも本当に遭難した後にこれをやるとすると何十メートル脇を締める体力が残っているのかなと思いました。
予行練習をすることはとても大事だと感じました。

クレーン救助初体験

クレーン救助初体験

午後からは火災の実技です。 消化訓練なんて小学校以来じゃないかと思うくらい経験がありませんでした。 しかも実際に油に火をつけて、燃え上がる炎を1人で消火器を使って消すと言う実践的なものです。 さらに屋外で風が強かった為、炎も風に煽られてかなりリアルです。 消火器にはパウダー、泡、CO2の3タイプがあり、それぞれタイプ別の実践でした。 他の受講者は慣れているのか持ち方もこなれているしボーボー燃える炎に簡単に挑んでいましたが、風向き次第で揺れ動く炎はとても熱くて恐怖感があり指導員に手伝ってもらいながら消火しました。

2回目以降はだんだんコツがわかってきて自力でできるようになってきました。

なんとか自力で消せるようになりました。

自力で消せるようになりました。

最後は発光筒です。 発光筒は安全備品でチェックするだけでなんとなく”触っちゃいけないもの”みたいに認識していて、実際に開けるなんて考えたこともなかったですが、遭難している情景を想像すると絶対に必要なものと理解できました。 発光筒も遭難中のシチュエーションによって3つのタイプを使い分けるので、細かいことですがしっかり復習して覚える必要があり、日本の特にクルーザー乗りにこういった遭難時の正しい知識をみんな持っているのだろうかという疑問が残りました。 今までの私みたいに安全規定だからとか船検に必要だからという理由でしか備えておらず、実際事故が起きた時に使えないという人は多いんじゃないかなと思いました。

この日は新しい経験が沢山出来て、自分自身にとってはとても実りが多く、楽しい1日となりましたが、この習った知識が日本でも当たり前になるように広めていけたらいいなというのが今回サバイバルトレーニングを受けてみて一番強く感じたこととなりました。

3日目は最終日。 半日のメディカルトレーニングで終了です。 初日に行ったファーストエイドをもとに、実際に遭難時に船からどうやって連絡するか、ロールプレイで練習したり、傷口の処理方法や医療品の説明などがありました。

講師は現役の医師と男性看護師が来ており、ロールプレイでは実際に人が倒れていてどこが悪いのか全く分からない状態から、仮の無線で受講者と医師が連絡を取り合いながら原因を見つけていくというリアリティのあるものでした。 病人は看護師の男性が演じていた為、痛がり方がやたらとリアルで受講者側は凄く焦るのでいい経験だと思いました。 みんながすごい演技力だったので私も名演技に挑戦したかったですが、さすがに通訳を通してだと言葉の壁がありすぎるのでこの実践は諦めました。

最後は実際の医療機器の見物です。 傷が大きく縫合が必要になった場合のホチキスのような機器は実際に自分の体にやってみることが出来ました。 ホチキスと言われると非常に怖くて始めは絶対やりたくないと思っていましたが、思ったよりみんなの反応が痛くなさそうなので試してみることにしました。 音は確かにホチキスのような音がして恐怖心が煽られますが、やってみるとほんのちょっと皮膚をくわえられてチクッとするくらい。 これも必要に駆られれば出来ることの一つになりました。

私は特に体の痛みには結構ビビリなので、メディカル的なことはほとんど出来ることがなかったのですが、今回は少しだけできる幅が広がったかなと思います。

メディカルトレーニングの時の講師ドクターが、文化の違いもあるが日本人は実戦で使えるように身につくまで何度も学習する。フランス人はわかったようなふりで受講するが本番で役に立たないと言って北田さんを指差していました。

聞くところによるとご自身のロリアンでの受講は2度目、カテ0で必要な受講は1回、日本人受講生のフォローで3回も受講しているらしく、要所要所で解説をして頂きました。

最終日のメディカルトレーニング

最終日のメディカルトレーニング

これで今回のサバイバルトレーニングの受講は全て終了です。 今回の遠征で一番新鮮なことが多く印象的なトレーニングとなりました。 学んだ内容を忘れないように日本に持ち帰りたいと思います。

*文中の写真は掲載許可を頂いております。

松苗幸希:北海道札幌市出身。49erFXでの活動を中心として、 国体、 キールボート(クルーザ一)でマッチレ一スや外洋レ一ス、北海道、関東の中高大学生のコ ーチングも行う。

詳細はこちら→ Sailors 松苗幸希

今回JORAの海外会員としてL30のレースに参戦。その様子を「幸希が行く」としてシリーズでお届けします。

幸希が行く【ロリアン 貴帆体験試乗編】

皆さん、こんにちは。
先日JORAに初の女性海外会員として、2月6日〜9日にモナコで開催されたPRIMO CUP – CREDIT SUISSE TROPHYレースに参加された松苗幸希さんからのレポート「幸希が行く」シリーズ。レースを終えて次はサバイバルトレーニングが行われるロリアンに移動します。今回はロリアン編前半をお楽しみください。
 
文:松苗 幸希氏
ニースを後にして移動

ニースを後にして移動

 
ニースを後にし、大荷物を持って大移動が始まりました。まずはニースからパリのシャルルドゴール空港まで飛行機で1時間半、そこから特急列車の始発駅であるモンテパルナス駅というパリ市内の駅まで1時間程のタクシー移動、そして特急列車のTGVでの移動でした。
 
ここで9日間お世話になった通訳のマナさんとお別れし、昼食のてんこ盛りのサラダ弁当を買って電車に乗り込みました。この日の驚きはTGVの使い勝手の悪さ。TGVは日本の新幹線とまではいかないまでもフランスでは新幹線のような立ち位置なので当然快適なものと想定していましたが完全に想定外。 車内の座席の配置が悪く、まずは、キャリーケースなどの大型荷物を置くスペースもほとんどない。地方と繋ぐ路線なのに荷物置き場が全然考えられていない設計になっていてなぜか2階席の方に収納スペースが多い。大型スーツケースを持って狭い階段を上がるのはすごく大変です。 さらに座席もすごい狭く、尚且つ座席が向かい合わせになってたりして、運悪く長時間知らない人と向かい合わせとかになったらかなりきまづい(笑) 約3時間ほどでロリアンに到着。 日本の新幹線は本当に優れているんだなということを実感した初のTGV旅でした。
 
ロリアンに到着

ロリアンに到着

 
到着2日目、まずはロリアンのベースキャンプを見学させて頂きました。
見たことない形のヨットや、インターネットでしか見かけたことがない艇が桟橋のあちこちに並んでいました。
さらにベース地にはセーリング界、オフショア界の英雄達の写真が倉庫の壁一面に飾られており、セーリングが街に受け入れられてることが伺えました。
ロリアンはClass40という艇種の貴帆艇が置いてある場所でもあります。
 
Class40の貴帆に体験試乗

Class40の貴帆に体験試乗

 
今回はこのClass 40の体験試乗とサバイバルトレーニングに参加することが目的でこの地にやって来ました。
初めて本格的なオフショアレースボートを見る機会を頂き、素人の私の視点からするとスターンの幅の広さに一番驚きました。
最近のキールボートはスタンが広く作られている物が多いですが、それらとは比べ物にならないほどで、安定感がすごいのかなと想像しました。
実際に船内に乗り込んで船内を見たときにはもっと驚きでした。
「これもう宇宙船じゃん‼︎」というのが私の感想です。
宇宙船のコクピットのような船内

宇宙船のコクピットのような船内


ヨットの船内は狭いと思い込んでいた私のイメージは一新しました。
横にいた北田さんがモナコで乗ったL30の時とは明らかに違う上機嫌な表情をしていて、北田さんがだんだん宇宙飛行士に見えて来ました。(笑)
 
ロリアンは悪天候が多く、2日目は強風につき残念ながら試乗はキャンセルになりましたが、天候も落ち着いた3日目はついにClass40で海上へ出ることが出来ました。
 
上機嫌な北田さんとツーショット

上機嫌な北田さんとツーショット


実際に乗ってみると思いの外独特な違和感みたいなものはなく、わりとすぐに慣れて大きい艇の走りを楽しむことが出来ました。
逆に大変だと思ったのはシート類の重さです。

40フィートほどの艇はあまり乗ったことがないのでハリヤードにしてもメインシートやジェネカーシートにしてもトリムをするのはとても難しいことがわかりました。
オフショアレースでは常時3本指に入るルイさんにも一緒に乗ってもらいいいイメージをもらって30マイルほどの帆走体験は終了しました。

 
Class40トップセーラーのルイさん(中央)

Class40トップセーラーのルイさん(中央)

松苗幸希:北海道札幌市出身。49erFXでの活動を中心として、 国体、 キールボート(クルーザ一)でマッチレ一スや外洋レ一ス、北海道、関東の中高大学生のコーチングも行う。

詳細はこちら→ Sailors 松苗幸希

今回JORAの海外会員としてL30のレースに参戦。その様子を「幸希が行く」としてシリーズでお届けします。

西村一広のJORAモナコPRIMO CUP遠征レポート(2020年2月2日〜2月9日)

こんにちは。松苗幸希さんの「幸希が行く」シリーズお楽しみいただいておりますでしょうか。
今回は一緒に参加しているセーリングコーチの西村一広氏のレポートをお届けします。お楽しみください。

文:JORAコンサルタント&コーチ 西村 一広氏

PRIMO CUP2020

PRIMO CUP2020

今回のモナコ遠征メンバー
JORA代表 北田浩
JORAサポートセーラー 松苗幸希
JORAコンサルタント&コーチ 西村一広
JORAサポートスタッフ・通訳 結城麻菜(在フランス)

JORAは、2020年最初のキャンペーンとして、PRIMO CUP2020(プリモカップ2020。モナコヨットクラブ主催。2020年2月6日〜9日)に、L 30クラスで参加した。

L 30クラスは、JORAの北田代表が兼ねてより親交があるウクライナのオリンピックメダリストLodion Luka(ロディオン・ルカ)氏がコンセプトを創生し、開発を進めた30ftモノハル・ワンデザインクラス。ショートハンドやフルクルーのレースだけでなく、ファミリークルージングにも対応するヨットとして、このところ欧米を中心に話題になっているクラスである。また、今年2020年から2024年まで、このL 30クラスのダブルハンドオフショアレース世界選手権を、ワールドセーリングが毎年開催することも決定している。

プリモカップ2020は、L 30クラスも含めた5クラスによる、フルクルーでのシリーズレースで、地中海のシーズン幕開けを告げるレースとして知られている。ヨーロッパでのシングルハンドレースやダブルハンドレースへの参戦を目指す日本人セーラーを支援するJORAとしてこのレースに参加した大きな目的は2つ。一つは、ルカ氏はじめこのL 30に乗るトップセーラーたちからこのクラスの情報と知識を出来る限り多く集めること。 そしてもう一つは、JORAがサポートする若手日本人セーラーに、このクラスの実際のセーリングを経験させること、である。

北田代表をスキッパーとするJORAチームは、レースが始まる前の練習日、公式プラクティスレース、3日間のレース日程の、合計5日間、ワンデザインクラスとして完全に仕上がったL 30クラスに乗ることができた。練習日にはルカ氏から直々に、レースではL 30クラス協会会長で2019年のヨーロッパチャンピオンRasmusTopsch(ラスモス・テプシュ)氏から、L 30クラスのセーリング特性やクルーワークについて多くを学ぶことができた。

この遠征でのJORAチームの経験は、今後の活動に大いに生かすことができることだろう。

 
L30設計者のLodion Luka(ロディオン・ルカ)氏(中央)とサポートセーラーの松苗幸希(手前)とL30をセーリング

L30設計者のLodion Luka(ロディオン・ルカ)氏(中央)とサポートセーラーの松苗幸希(手前)とL30をセーリング

RasmusTopsch(ラスモス・テプシュ)氏から、L30クラスのセーリング特性やクルーワークについて多くを学ぶ

RasmusTopsch(ラスモス・テプシュ)氏から、L30クラスのセーリング特性やクルーワークについて多くを学ぶ

セーリングコーチとしてL30に同乗

セーリングコーチとしてL30に同乗

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