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2020-03-19

幸希が行く【ロリアン サバイバルトレーニング編】

皆さん、こんにちは。

先日JORAに初の女性海外会員として、2月6日〜9日にモナコで開催されたPRIMO CUP – CREDIT SUISSE TROPHYレースに参加された松苗幸希さんからのレポート「幸希が行く」シリーズ。貴帆体験試乗の後はミッションの一つであるサバイバルトレーニング(2月13〜15日開催)に参加しました。ロリアン編後半お楽しみください。

文:松苗 幸希氏

ロリアン滞在4日目。ミッションの一つであるサバイバルトレーニングが始まりました。

朝8時から夕方5時までの講習が3日間と長時間のスケジュールが組まれていたので、安全に対する真剣度合いが私の知っている形だけのものとは違うなということが感じられました。

講習の初日はメディカルトレーニングと、緊急脱出の際の知識がメインでした。 メディカルに関してはセーリングのインストラクター資格取得の際にやったことがある内容と似ていたので久しぶりにいい復習になりました。 緊急脱出に関することは全てが知らないことばかりで、特に通信機器関係は基本的な知識がなさすぎて、用語も知らないしどれがどんな通信方法なのかもわからず完全に苦手分野でした。

講習は全てフランス語で進められるので通訳のパトリシアさんを介しての学びとなり、通訳さんを通して何かをするということも初体験をすることが出来ました。 英語なら何となくわかる単語と話し手の表情で理解してきたのに、一言も単語がわからない言語になると表情を見ても全くわからないものだなと妙に新しい発見がありました。 逆に英語が堪能ではない国で遭難、救助が必要になった場合はすごく大変だろうなということも想像出来ました。

サバイバルトレーニング実技準備中

サバイバルトレーニング実技準備中

1日目に習ったことを踏まえて、2日目は実技でした。
プールで何かすると聞いていたので海猿的なキツイ泳ぎをやるんじゃないかと想像していて、体力的に付いていけるかなぁとか、震えるほど寒いんじゃないかなとか不安でしたが、実際やってみるとサバイバルスーツの形のユニークさや、水温もそこまで冷たく感じなかったので不安は吹き飛びました。
本当に遭難したらそれどころじゃないんだろうけど、サバイバルスーツのウルトラマンのような、スッパマンのようなシルエットはちょっと笑えて、一緒に受講したみんなはノリノリで写真撮影をしていました。

サバイバルスーツを着てみんなで撮影

サバイバルスーツを着てみんなで撮影

講習が始まるとまず、ライフラフトと呼ばれる膨張性の屋根付き救命いかだを実際に膨張させるところから始まりました。
通常はハードなアタッシュケースみたいなものに収納されていますが、ケースに付いてるロープを引っ張っていくとケースから飛び出て勝手にシュ〜〜ポンッッ!!と膨らみます。
なんとなくケースは見たことはありましたが、アレに本当に救命艇が入ってたんだ‼︎という驚きが凄かったです。
膨らんだライフラフトに乗り込んで待つときの姿勢や、もしも転覆してしまった場合の起こし方などを練習しました。

ライフラフトで実習

ライフラフトで実習

一番の経験はヘリコプターを想定したクレーンで体を引き上げられたことです。
救助用の輪になったベルトに体をくぐらせ、脇をしっかり閉めたら手サインを送って引き上げてもらいます。
実際に引き上げてもらうと、濡れたサバイバルスーツの重さもあって意外ときつく、もしも本当に遭難した後にこれをやるとすると何十メートル脇を締める体力が残っているのかなと思いました。
予行練習をすることはとても大事だと感じました。

クレーン救助初体験

クレーン救助初体験

午後からは火災の実技です。 消化訓練なんて小学校以来じゃないかと思うくらい経験がありませんでした。 しかも実際に油に火をつけて、燃え上がる炎を1人で消火器を使って消すと言う実践的なものです。 さらに屋外で風が強かった為、炎も風に煽られてかなりリアルです。 消火器にはパウダー、泡、CO2の3タイプがあり、それぞれタイプ別の実践でした。 他の受講者は慣れているのか持ち方もこなれているしボーボー燃える炎に簡単に挑んでいましたが、風向き次第で揺れ動く炎はとても熱くて恐怖感があり指導員に手伝ってもらいながら消火しました。

2回目以降はだんだんコツがわかってきて自力でできるようになってきました。

なんとか自力で消せるようになりました。

自力で消せるようになりました。

最後は発光筒です。 発光筒は安全備品でチェックするだけでなんとなく”触っちゃいけないもの”みたいに認識していて、実際に開けるなんて考えたこともなかったですが、遭難している情景を想像すると絶対に必要なものと理解できました。 発光筒も遭難中のシチュエーションによって3つのタイプを使い分けるので、細かいことですがしっかり復習して覚える必要があり、日本の特にクルーザー乗りにこういった遭難時の正しい知識をみんな持っているのだろうかという疑問が残りました。 今までの私みたいに安全規定だからとか船検に必要だからという理由でしか備えておらず、実際事故が起きた時に使えないという人は多いんじゃないかなと思いました。

この日は新しい経験が沢山出来て、自分自身にとってはとても実りが多く、楽しい1日となりましたが、この習った知識が日本でも当たり前になるように広めていけたらいいなというのが今回サバイバルトレーニングを受けてみて一番強く感じたこととなりました。

3日目は最終日。 半日のメディカルトレーニングで終了です。 初日に行ったファーストエイドをもとに、実際に遭難時に船からどうやって連絡するか、ロールプレイで練習したり、傷口の処理方法や医療品の説明などがありました。

講師は現役の医師と男性看護師が来ており、ロールプレイでは実際に人が倒れていてどこが悪いのか全く分からない状態から、仮の無線で受講者と医師が連絡を取り合いながら原因を見つけていくというリアリティのあるものでした。 病人は看護師の男性が演じていた為、痛がり方がやたらとリアルで受講者側は凄く焦るのでいい経験だと思いました。 みんながすごい演技力だったので私も名演技に挑戦したかったですが、さすがに通訳を通してだと言葉の壁がありすぎるのでこの実践は諦めました。

最後は実際の医療機器の見物です。 傷が大きく縫合が必要になった場合のホチキスのような機器は実際に自分の体にやってみることが出来ました。 ホチキスと言われると非常に怖くて始めは絶対やりたくないと思っていましたが、思ったよりみんなの反応が痛くなさそうなので試してみることにしました。 音は確かにホチキスのような音がして恐怖心が煽られますが、やってみるとほんのちょっと皮膚をくわえられてチクッとするくらい。 これも必要に駆られれば出来ることの一つになりました。

私は特に体の痛みには結構ビビリなので、メディカル的なことはほとんど出来ることがなかったのですが、今回は少しだけできる幅が広がったかなと思います。

メディカルトレーニングの時の講師ドクターが、文化の違いもあるが日本人は実戦で使えるように身につくまで何度も学習する。フランス人はわかったようなふりで受講するが本番で役に立たないと言って北田さんを指差していました。

聞くところによるとご自身のロリアンでの受講は2度目、カテ0で必要な受講は1回、日本人受講生のフォローで3回も受講しているらしく、要所要所で解説をして頂きました。

最終日のメディカルトレーニング

最終日のメディカルトレーニング

これで今回のサバイバルトレーニングの受講は全て終了です。 今回の遠征で一番新鮮なことが多く印象的なトレーニングとなりました。 学んだ内容を忘れないように日本に持ち帰りたいと思います。

*文中の写真は掲載許可を頂いております。

松苗幸希:北海道札幌市出身。49erFXでの活動を中心として、 国体、 キールボート(クルーザ一)でマッチレ一スや外洋レ一ス、北海道、関東の中高大学生のコ ーチングも行う。

詳細はこちら→ Sailors 松苗幸希

今回JORAの海外会員としてL30のレースに参戦。その様子を「幸希が行く」としてシリーズでお届けします。

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